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断水への備え、結局どれを選ぶ?エコキュート・貯水タンク・ペットボトルを比べて考える
断水のニュースを見るたびに、「うちも水を備えなければ」と思いながら、何から始めればよいか分からないまま過ぎていませんか。ペットボトルを箱で買えばよいのか、エコキュートがあれば足りるのか、貯水タンクを付けるべきなのか。それぞれを同じ物差しで比べた情報は、意外と見つかりません。
この記事では、家庭で水を確保する3つの方法を、「費用」「確保できる量」「飲めるかどうか」「手間」の4つで並べて比べます。先に結論をお伝えすると、どれか1つを選ぶのではなく、組み合わせるのが現実的です。そして、順番も大切です。いまの家にあるものを、確実に使える状態にすることが、いちばん費用がかかりません。
なお、この記事の内容は、2026年10月6日時点で確認した情報にもとづいています。補助金の状況などは変わりますので、最新の情報は公式サイトでご確認ください。
まず、水はどれだけ必要か
飲み水と調理には、1人1日3リットルが目安
備えの量を決める前に、必要な量をはっきりさせましょう。国や自治体の防災の案内では、飲み水と調理に使う水として、1人1日3リットルが目安とされています。備蓄の日数は、最低3日、できれば1週間が目安です。
この3リットルは、飲むことと、ご飯や汁物をつくることのための量です。体を洗ったり、トイレを流したりする水は含まれていません。「3リットル×人数×3日分」で安心してしまうと、断水が続いたときに、すぐに足りなくなります。
大きな災害では、断水が長引くことがあります。国土交通省によると、2026年の熊本地震では、水道について、最大で約108,000戸が断水しました。すべての水道本管の応急復旧が終わったのは、8月28日とされています。3日分では足りない場合があることを、前提にしておきましょう。
生活用水は、別に1人1日10〜20リットルが目安
飲み水とは別に、生活用水が必要です。トイレ、手洗い、顔や体を拭く水、食器洗い、掃除などです。量は、1人1日10〜20リットルといわれます。飲み水の3リットルと比べて、3倍から7倍近くになります。
この量を、ペットボトルだけでまかなうのは、現実的ではありません。そこで、エコキュートや貯水タンクのような、まとまった量を確保できる手段が意味を持ちます。飲み水は備蓄で、生活用水は設備で、という役割分担が基本になります。
4人家族の1週間では、どれくらいか
4人家族が1週間、自宅で過ごす場合を計算してみます。
- 飲み水と調理:3リットル × 4人 × 7日 = 84リットル
- 生活用水(節水して1人1日10リットル):280リットル
- 生活用水(ふつうに使って1人1日20リットル):560リットル
- 合計:節水して364リットル、ふつうに使って644リットル
84リットルは、2リットルのペットボトルで42本、6本入りの箱で7箱です。保管する場所さえあれば、用意できる量です。一方、生活用水の280〜560リットルは、ペットボトルでは難しい量です。
ここで目を向けたいのが、エコキュートの貯湯タンクの容量です。一般的な370リットルは、節水した場合の合計(364リットル)とほぼ同じです。エコキュートがある家は、1週間分の生活用水に近い量を、すでに持っていることになります。
方法1:エコキュート(すでにある家向け)
戸建ての約3割が使っている
エコキュートは、空気の熱を使ってお湯をつくり、タンクに貯める給湯器です。環境省の調査(2023年度)では、戸建て住宅の約3割が、電気ヒートポンプ式の給湯器を使っています。戸建てなら、3軒に1軒ほどです。新しく何かを買う前に、まず自宅の給湯器が、エコキュートかどうかを確認しましょう。屋外に縦長のタンクと、エアコンの室外機に似たヒートポンプユニットが並んでいれば、エコキュートです。
メリット:追加の費用なしで、370〜460リットル前後
最大の利点は、新しい費用がかからないことです。すでに付いている機器で、370〜460リットル前後の水を確保できます。ふだんの給湯で使うため、備蓄の水のように、期限を管理する必要もありません。
断水時は、貯湯ユニット下部の非常用取水栓から取り出します。手順はメーカーで違いますが、おおむね「漏電遮断器を切る」「止水栓を閉じる」「逃し弁のレバーを上げる」「取水栓にホースをつなぐ」「栓を開けて容器で受ける」という流れです。詳しくは、「断水したらエコキュートから水を出す方法|共通の5ステップと、断水前・復旧後の注意点」で説明しています。
デメリット:飲用の扱い、転倒、手順を知らないと使えない
注意点は3つあります。
1つ目は、飲用です。タンクの水は、そのままでは飲めません。ダイキンと三菱電機は、飲むなら一度沸騰させるよう案内しています。パナソニックは、ページによって案内が違います。コロナは、飲用を避けるよう案内しています。こうした違いがあるので、タンクの水は生活用水として使い、飲み水は別に備蓄しておくのが安全です。詳しくは、「エコキュートのタンクの水は飲める?煮沸の条件と、地震で倒れないかを確かめる3つの方法」をご覧ください。
2つ目は、地震による転倒です。国民生活センターによると、2011年の東日本大震災と2016年の熊本地震のときに、貯湯タンクが倒れたという相談が寄せられました。振動試験では、固定していないタンクは、震度6弱相当の揺れで倒れました。調べた100件のうち63件で、告示にもとづく太さ・本数のボルトが使われていませんでした。倒れてしまえば、水は使えません。
3つ目は、手順を知らなければ使えないことです。取扱説明書の置き場所、ホース、止水栓の位置を、災害のときに探し始めては間に合いません。ふだんから確認しておきましょう。
新しく導入するなら:給湯省エネ2026事業の補助金
これからエコキュートを導入する場合は、国の補助金「給湯省エネ2026事業」が使えます。エコキュートの補助額は、基本額が1台7万円で、性能加算の要件を満たす機種は、さらに3万円が上乗せされます(合計で最大10万円)。
撤去加算もあります。電気蓄熱暖房機の撤去は1台4万円(最大2台まで)、電気温水器の撤去は1台2万円です。ただし、エコキュートの撤去は、撤去加算の対象になりません。いまのエコキュートを買い替える場合は、撤去加算は受けられません。
この事業は、予算の上限に達すると、受付が終わります。公式サイトによると、2026年10月5日午前0時時点で、予算に対する申請額の割合は、全体で48%でした。最新の数字は、公式サイトでご確認ください。自治体が上乗せの補助を用意している場合もあります。お住まいの市区町村にも、確認してみましょう。
なお、補助金の詳しい内容は、「【2026年】エコキュートと電気温水器の違いは?電気代・費用・補助金で選ぶ5つのポイント」でも説明しています。エコキュートは、省エネのための設備です。災害対策だけを理由に、導入するものではありません。
方法2:水道直結型の貯水タンク(飲み水もまとめて確保したい家向け)
仕組み:ふだんは水道管の一部として、水が入れ替わる
飲み水をまとまった量で確保したい場合の選択肢が、水道直結型の貯水タンクです。タンクが、水道管の途中に組み込まれています。ふだん蛇口を使うたびに、タンクの水も入れ替わります。つまり、「ためておく」のではなく、「流れている水の一部を、いざというときに取り出せる形で持っている」仕組みです。断水のときは、バルブを開けて取り出します。
ペットボトルのように、賞味期限を管理したり、定期的に入れ替えたりする手間が、かかりにくいのが利点です。
製品の例:ミヤコー「水蔵」
製品の一例が、株式会社ミヤコーの「水蔵(みずのくら)」です。メーカーの公式サイトによると、次のような特徴があります。
- 85リットルのタイプは、4人家族が1週間ほど生活できる飲み水を確保できる貯水量とされています。ここまでに計算した、4人家族の1週間分の飲み水と調理の量(84リットル)と、ほぼ同じです。
- 設置のタイプは、床下に置いて専用ポンプで加圧する一般住宅用や、縦置きで小さなスペースに置けるマンションなど向けのタイプがあります。
- 電源やメンテナンスは不要で、ランニングコストはかからないとされています。
- 群馬大学との共同開発による、水をきれいに保つ構造だとされています。また、日本水道協会の認証(Z-288)が表示されています。
価格は、公式サイトに載っていませんでした。導入を考えるときは、メーカーや取扱業者に問い合わせてください。給水配管の工事が必要なため、費用は、住宅の構造によって変わると考えられます。この記事は、特定の製品をすすめるものではありません。
エコキュートとの違い:水が入れ替わり続けているか
同じ「家に水をためる設備」でも、エコキュートは煮沸が必要で、貯水タンクはそのまま飲めるとされるのはなぜでしょうか。一般的な説明では、分かれ目は、水が入れ替わり続けているかどうかです。
水道直結型の貯水タンクは、日常的に水を使うたびに、新しい水が入ります。メーカーは、水が滞留しにくい構造だと説明しています。一方、エコキュートのタンクは、1日分のお湯を貯める設計で、水は加熱され、長く滞留します。長く使うと、タンクの中に水あかがたまったり、配管が傷んだりして、水質が変わることがあります(三菱電機のよくある質問より)。こうした理由から、メーカーは、飲むなら煮沸するよう案内しています。
マンションでの設置
マンション向けのタイプがある製品もあります。ただし、集合住宅では、管理規約や、共用部分の扱いが関わります。専有部分の給水管に手を加えるため、管理組合への確認が必要です。設置の場所を確保するのも、戸建てより難しくなります。まず管理規約を確認し、そのうえで、メーカーや施工業者に相談する流れが現実的です。建物に受水槽があるかなど、自宅の給水の方式を把握しておくことも、備えの一部です。
方法3:ペットボトルやポリタンク
ローリングストックの考え方
いちばん手軽で、今日から始められるのが、ペットボトルの備蓄です。コツは「ローリングストック」です。ふだんから少し多めに買い置きし、古いものから飲んで、飲んだ分を買い足します。しまい込んで忘れることがなく、賞味期限切れも防げます。
置き場所は、分けておきましょう。1か所にまとめると、地震でその部屋に入れなくなったときに、取り出せません。台所、寝室、玄関の収納、車など、複数の場所に分けると安心です。
保管の現実:2リットル42本は、どれくらいか
4人家族の1週間分の飲み水と調理の水は、84リットルでした。2リットルのペットボトルで42本、6本入りの箱で7箱です。水だけで84キログラムあり、6本入りの1箱は、約12キログラムです。大人でも、両手で運ぶ重さです。
7箱分は、押し入れの下段やクローゼットの床を、かなり使います。しかも、これは飲み水の分だけです。生活用水まで含めると、ペットボトルでは現実的ではありません。エコキュートで生活用水をまかなえるなら、ペットボトルは、飲み水の分だけで済みます。
ポリタンクは、水をためておくためではなく、給水車から水を運ぶために用意するものと考えましょう。水道水を長く置いておくのは、おすすめされません。空の状態で備えておき、給水を受けるときに使います。20リットルを満たすと、20キログラムになります。運ぶ人によっては、10リットル以下のものや、キャリーカートが向いています。
3つの方法を比べる
| 項目 | エコキュート | 水道直結型の貯水タンク | ペットボトル |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | すでにあれば0円。新規導入は補助金あり(7万円、性能加算で最大10万円) | 公式サイトに記載なし(要問い合わせ) | 買った分だけ |
| 確保できる量 | 370〜460リットル前後 | 例:85リットル(製品による) | 買った分だけ |
| 飲用 | 基本は生活用水(煮沸の案内はメーカーで違う) | そのまま飲める(メーカーの案内による) | そのまま飲める |
| 維持の手間 | ふだんの使用で入れ替わる | 水道の一部として入れ替わる | ローリングストックが必要 |
| 弱点 | 転倒すると使えない | 設置の工事が必要 | 保管の場所と重さ |
費用では、すでにエコキュートがある家が有利です。追加の費用なしで、370リットル以上を確保できているからです。量では、エコキュートが大きく、貯水タンクは飲み水に向いた量です。両者は競うものではなく、役割が違います。たとえば、貯水タンクの85リットルが、飲み水と調理の分をほぼまかない、エコキュートの370リットルが、節水した場合の生活用水をまかなう、という関係です。
どれか1つで完結させようとせず、次の順番で組み合わせるのが現実的です。
- すでにあるエコキュートを、確実に使える状態にする(固定の確認と、取り出しの手順の確認)
- 飲み水を、ペットボトルで最低3日分、できれば1週間分備える(4人家族なら、6本入りの7箱が目安)
- さらに備えを厚くしたい、または保管の場所を減らしたいときに、水道直結型の貯水タンクを考える
この順番なら、費用をかけずに始められ、少しずつ厚くできます。いきなり設備の導入から考えると、費用の壁で、何も進まなくなりがちです。
なお、どの方法でも、取り出した水に、固形物、変色、濁り、異臭があれば、飲まないでください。
水だけでなく、電気も考える
自宅で過ごす「在宅避難」
近年は、自宅の安全が確認できる場合に、避難所へ行かずに自宅で生活を続ける「在宅避難」が重視されています。避難所の収容人数には限りがあり、小さな子どもや高齢の家族、ペットがいる家庭では、避難所生活の負担が大きくなるためです。ただし、建物の安全が確認できることが大前提です。倒壊や火災の危険があるときは、迷わず避難してください。
電気とのセットで考える
在宅避難では、水だけでなく電気も大切です。エコキュートは、停電すると、新しくお湯を沸かせません。タンクに残っている分は取り出せますが、使い切れば補充はできません。水を煮沸するにも、カセットコンロなどの熱源が要ります。スマートフォンの充電や、暑さ寒さをしのぐ空調も、電気に頼っています。
共同通信(OVO)の報道によると、熊本県エネルギー政策課の課長は、2016年の熊本地震のときに、屋根の太陽光発電や蓄電池などが、停電した地域で自立運転して、電気の供給源になったと述べました。また、同じ報道で、熊本市の太陽光発電の工事などを行う会社の社長が、2026年7月の地震で、県内のエコキュートの倒壊の状況を確認したと話しています。エコキュートのタンクには約400リットルの水があり、災害のときの緊急用の水になりますが、倒壊すれば使えないという指摘です。設備は、倒れず、壊れない状態で、はじめて備えとして働きます。
まとめ:今日できる3つのこと
- 4人家族が1週間自宅で過ごすには、飲み水と調理に84リットル、生活用水に280〜560リットル、合計364〜644リットルが必要です。
- 飲み水は備蓄で、生活用水は設備で、という役割分担が基本です。
- エコキュートは、追加の費用なしで370〜460リットル前後を確保できます。貯水タンクは、飲み水をまとめて確保できます。ペットボトルは、手軽に始められますが、保管の場所と重さが課題です。
今日できることを、3つ挙げます。
- 自宅のエコキュートの固定を確認する:貯湯ユニットの脚が、基礎にボルトで固定されているかを見に行きましょう。5分ほどでできます。置いてあるだけなら、点検を依頼してください。
- 取扱説明書とホースの場所を確認する:断水時の取り出し手順を、いまのうちに読んでおきましょう。型番を撮影し、取扱説明書のPDFをスマートフォンに保存しておくと、より確実です。
- ペットボトルを1箱買い足す:完璧な備蓄を目指す必要はありません。今日1箱増やせば、そのぶん備えは進みます。
水の備えは、設備を買うことから始める必要はありません。すでに家にあるものを、確実に使える状態にする。それが、いちばん費用のかからない、最初の一歩です。
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参考・出典
- 給湯省エネ2026事業【公式】(経済産業省)
- 事業概要|給湯省エネ2026事業【公式】
- 予算に対する補助金申請額の割合|給湯省エネ2026事業【公式】
- 緊急用直結式飲料貯水装置 水蔵(株式会社ミヤコー)
- お湯はそのまま飲用できますか?(エコキュート)|よくあるご質問(ダイキン)
- 飲用に使用できますか?|よくあるご質問(三菱電機)
- 地震による転倒の防止策−電気給湯設備の貯湯タンクと家具・家電について−(国民生活センター)
- 令和8年熊本地震における上下水道の復旧見込みについて(国土交通省)
- 令和8年熊本地震における水道施設の応急復旧完了のお知らせ(国土交通省)
- 「電気ないと仕事できない」災害時の事業継続性を議論 企業は再エネ自立経営を(OVO/共同通信)
- 給湯機器について|家庭部門のCO2排出実態統計調査(環境省)
- 災害・断水・停電時|よくあるご質問|エコキュート(コロナ)
- 断水・凍結について|災害時の商品取り扱いに関するご注意(Panasonic)